外部から収入がある場合、税金を納める義務があります

 もともと分譲マンションの管理組合には税金を納める義務はありません

 マンション管理組合は自分たちのマンションの共用部分を管理するための集まりです。外部から収入(儲け)を得ることは本来の目的ではありません。区分所有者が管理費と修繕積立金を出し合い、それを元手に日常的な管理や大規模修繕を行っています。これは自分たちのお金を自分たちのために使っているだけです。

 しかし、マンションの区分所有者以外から収入(外部収入、儲け)がある場合は別。

 外部収入の例として携帯電話基地局広告看板自動販売機設置収入駐車場の賃貸収入などさまざまありますが、これらは収益事業を行っていることになります。収益事業を行っている場合、法人税を納める義務が発生します。

税金を納めない場合、ペナルティの税金が科されます

 税金を納める義務があるのに納めなければ、罰則が科されてしまいます。延滞税不納付加算税など、本来負担すべき税金よりも多くの税金を支払わなければなりません。しかも過去5年分をさかのぼって支払います。管理組合の財政状態が厳しければ分割払いもできますが、さらに延滞税も発生します。

 外部収入を毎年申告し納税していれば毎年の予算に計上し、管理費会計や修繕積立金会計の管理もわかりやすくなります。しかし過去の税金をさかのぼって一時に支払おうとすると、管理組合の財務の見通しが狂ってしまいます。多数決で運営されている管理組合にとって、困難な状況におちいる可能性が高いのです。

 しかも! 実はマンション管理組合が外部収入を得ていることは、税務署は知っているのです。

 携帯電話会社が基地局を設置して管理組合へ設置料を支払うと、携帯電話会社は毎年税務署へ報告する義務があります。したがってどの管理組合が税務申告をし、どの管理組合が税務申告をしていないかを税務署は知っています。税務署から管理組合へ【おたずね】が来るタイミングは税務署次第であり、今後は管理組合の収益事業に対する課税が強化される見通しとなっています。なぜなら平成30年に東京高裁が管理組合に対して課税を認める判決を出しており、税務署が税務申告を適切に実施するよう管理組合に促しているからです。

理事長、監事にのしかかる責任

 理事長は、管理組合を代表し、その業務を統括し、業務を執行します。監事は、管理組合の業務の執行と財産の状況を監査し、報告します。

 税金を納めるのは管理組合の義務ですが、申告と納税という業務を執行するのは理事長の職務です。法律に違反する事実があれば、理事長の責任が問われてしまいます。また理事長やその他の理事が法律に違反する事実があれば、監事は理事会へ報告しなければいけませんし、毎年行われる総会に先立って監査を行い、その内容を総会に報告しなければなりません。

 マンションの区分所有者は税金に詳しい人ばかりではありません。しかし税金の法律は、交通ルールと同様に「知らなかった」では済まされません。無申告という違法行為(脱税)があれば理事長の責任となりますし、そのことを指摘しなかった監事の責任も問われます。実際に刑事事件へ発展することはないかと思いますが、マンション内の人間関係に少なからず悪影響を及ぼすおそれがあります。

 税務署からの「おたずね」は嫌なものです。「おたずね」が来てしまうと理事・監事の心は落ち着かず、人間関係もギスギスしてしまいます。ですから「おたずね」が来る前に、納税の義務について理事会内で落ち着いて話し合い、次期の予算を立てるときに納税の計画を織り込むことが重要です。第三者の助けがあれば、理事会内での合意形成、管理組合内での合意形成もいくぶん円滑になります。その時にはぜひ国家資格者であるマンション管理士や税理士を活用してください

税金なんて税務署にバレるまで知らんぷりしてればいい!という意見を言う人も稀にいますが、自分の評判を落としかねないのであまりはっきりとは言いません。しかも第三者がいればなおさらそんな意見は出ないものです)

税金を納めないとマンションの資産価値は下がります

 マンションを買うとき、買い主は重要事項調査報告書をチェックします。重要事項調査報告書とはマンションの管理状態に関する書類であり、管理会社が作成し発行します。マンションの管理がどのように行われているか、管理費・修繕積立金の収支や財政状態がどのようになっているかが記載されています。最近では管理組合の決算書(収支報告書・貸借対照表・財産目録)、総会議案書、議事録を取り寄せる買い主も増えてきました。買うときの中古価格だけでなく、買ったあとの管理状態も見据えて購入を決めているのです。

 また、2022年4月よりマンション管理適正評価制度マンション管理計画認定制度という新たな制度がスタートします。これら新制度の目的はいくつかありますが、管理組合の運営状態を明らかにすることによって住宅ローンの担保価値が評価されるため、中古価格を決める際の指標にもなります。

 以前より「マンションは管理を買え」と言われますが、最近ますます管理組合の運営状態が注目されています。適正に管理されているマンションの資産価値は上がり、そうでないマンションの資産価値は下がります。外部収入があれば、買い主は「この管理組合は税金をちゃんと納めているか?」をチェックします。納税していなければ税金を滞納しているのと同じですから、過去の分までまとめて納税しなければなりません。管理組合の収支と財政状態がいっきに悪化してしまいます。管理組合の収支報告書をチェックすれば税金を納めているかどうか分かってしまいますから、そのぶん中古価格(資産価値)も下がります

 運営状態が良いマンションは魅力的であり、中古価格が上がり、住環境としてもより良くなっていきます。逆であれば、住環境としてどんどん悪くなり「ジリ貧」の状態に陥ります。現在の区分所有者にとっても、将来の区分所有者にとっても「住みよいマンション」にするためにはちゃんと税金を納めることが必要です。

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