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税務
管理費会計と修繕積立金会計

こんにちは、マンション管理士・税理士の深谷高史(ふかやたかし)です。

収入すべてをすぐに使ってしまう人の家計はとても不安定なものです。
それを避けるため、今使う資金将来使う資金とを分けて管理します。
マンション管理組合も目的別に資金を分けており、今回のブログでは区分経理について解説します。

【もくじ】
・管理組合の会計に特有の「区分経理」
・管理費と修繕積立金
・管理費会計から支出される経費の例
・修繕積立金会計から支出される経費の例
・さいごに

管理組合の会計に特有の「区分経理」

前回のブログ「会計予算と会計決算」で説明しましたが、マンション管理組合の会計に特有の考え方として「予算準拠」というものがあります。
予算準拠とは、管理組合の収入・支出は総会で承認された予算にもとづいて行う必要があるとする考え方です。
予算準拠のほかにも管理組合の会計に特有の考え方として「区分経理」があります。
区分経理とは管理組合の資金を目的別に分けて経理することであり、「目的別経理」とも呼ばれます。

国土交通省が2021年9月28日に公示した「マンションの管理の適正化の推進を図るための基本的な方針」では、管理組合の経理について次のように述べています。

管理組合がその機能を発揮するためには、その経済的基盤が確立されている必要がある。
このため、管理費及び修繕積立金等について必要な費用を徴収するとともに、管理規約に基づき、これらの費目を帳簿上も明確に区分して経理を行い、適正に管理する必要がある。(9ページ)

この文章は、区分経理の重要性を説明しています。
区分経理をしなければ管理組合の経済的基盤が弱くなってしまうと解釈できます。
管理組合の経済的基盤が弱くなればどうなるか…マンションを持続的に管理できなくなってしまいます(つまり破綻状態です)。

管理費と修繕積立金

収入があればすぐにほとんど使ってしまう人がいますよね。
そういう人は一時的には問題ないかもしれませんが、突発的な原因や高齢化によって家計が破綻してしまうでしょう。
マンションも自分の生活も安定して維持していくためには、将来のための資金を積み立てておく必要があるのです。

マンション管理組合の収入・支出は、「管理費」と「修繕積立金」の2つに大別されます。
「管理費」とは、通常の管理を行うために必要な費用に充当するため徴収される資金です。
経常的な支出を目的とした資金ですので、家計で言えば毎月の生活費のイメージです。

「修繕積立金」とは、一定年数が経過する都度、計画的に行われる大規模修繕や特別な修繕のための費用に充当するため徴収される資金です。
臨時的な支出を目的とした資金ですので、家計で言えば数年に一度の臨時支出のイメージです。

修繕積立金は毎月コツコツ貯めて、一時的にまとめて使います。
その積立が不足していたら…漏水が直せない、外壁の傷みが直せない、エレベーターの故障が直せないという困った状況もあり得ます。
だからこそ、経常的な目的の資金と臨時的な目的の資金とを明確に区分して管理する必要があるのです。

管理費会計から支出される経費の例

管理規約の見本である「標準管理規約」(国土交通省、2021年6月改定)では、管理費の例として次の項目が挙げられています(第27条)。

・管理員人件費
・公租公課
・共用設備の保守維持費及び運転費
・備品費、通信費その他の事務費
・共用部分等に係る火災保険料、地震保険料その他の損害保険料
・経常的な補修費
・清掃費、消毒費及びごみ処理費
・委託業務費
・専門的知識を有する者の活用に要する費用
・管理組合の運営に要する費用
・その他

どれも毎年かかる費用ですね。

修繕積立金会計から支出される経費の例

「標準管理規約」では、修繕積立金の例として次の項目が挙げられています(第28条)。

・一定年数の経過ごとに計画的に行う修繕
・不測の事故その他特別の事由により必要となる修繕
・敷地及び共用部分等の変更
・建物の建替え及びマンション敷地売却(以下「建替え等」という。)に係る合意形成に必要となる事項の調査
・その他敷地及び共用部分等の管理に関し、区分所有者全体の利益のために特別に必要となる管理

どれも数年に一度かかる費用ですね。
修繕積立金の取崩しは総会の決議を経なければならないので、理事会が勝手に使うことはできません(第48条)。
将来のために貯めている資金なので、厳重に保全されているのです。

さいごに

マンションの持続的な管理のためには区分経理が必要です。
区分経理とは、管理費の資金と修繕積立金の資金とを区分して経理することです。
2つの資金を明確に区分して、収入から支出まで記録します。
こうしたことから一般企業と比べて、マンション管理組合の経理は書類の種類が独特です。
目的が異なる企業2社分の経理というイメージなのですが…分かりにくいですね。

そのため、一般企業などで用いられる弥生会計やfreeeなどの会計ソフトをそのまま使うことができません
マンション管理組合用の会計ソフトか、相当程度のデータ加工をしなければ会計資料も総会資料も作ることができません。
当事務所は、マンション管理組合の税務申告だけでなく会計代行(記帳代行)も行っておりますのでお気軽にご相談ください
管理組合の書類は膨大であり次期役員への引継ぎは大変な手間です。
書類整理などの方法もお教えすることができますのでぜひ頼ってください!
お問い合わせフォームでのご連絡、お待ちしております。

次回のブログでは、マンション管理組合の会計書類について説明します。
予算準拠と区分経理の2つの特徴があるため、総会議案書の会計書類は最低でも4つとなります。

最後までお読みいただき、いつもありがとうございます m(__)m
2022.03.16記

この記事を書いた人

陽だまりマンション税務事務所/代表・深谷高史(ふかやたかし)
一般社団法人愛知県マンション管理士会 理事
東海税理士会刈谷支部 所属

マンション管理士、税理士、マンション管理組合理事長の3つの顔を持っています。分譲マンション管理組合の税務申告を得意としています(携帯電話基地局など)。このサイトでは、マンション管理、税務、FPなどについてできるだけわかりやすくお伝えしています。

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