BLOG
マンション管理
地方公共団体による管理組合への助言・指導・勧告

こんにちは、マンション管理士・税理士の深谷高史(ふかやたかし)です。
2021年11月30日、地方公共団体がマンション管理組合に対して助言・指導・勧告を行う際のガイドラインが公表されました。
このガイドラインは国土交通省により策定されたものであり、最近は立て続けに指針やガイドラインの策定・改定が行われています。
今回のブログでは「地方公共団体による助言・指導・勧告のガイドライン」について解説します。

《目次》

1.正式名称とその背景は?

2.管理不全マンションの何が問題なのか?

3.助言等の具体的な内容

4.助言等のPDCAサイクル

5.さいごに

1.正式名称とその背景は?

2021年11月30日、国土交通省は「マンションの管理の適正化の推進に関する法律第5条の2に基づく助言・指導及び勧告に関するガイドライン」を策定しました。
正式名称がとても長いので、私は「助言等ガイドライン」と呼んでいます。

最近のマンション政策の社会的背景には分譲マンションの「増加」と「高経年化」があり、政策の目的はマンション管理の「適正化」です。
将来に向けてさらに「高経年マンションの増加」が見込まれるため、今のうちからその対応が積極的に行われているのです。
今後、国・地方公共団体は分譲マンションの管理適正化のためにより強く支援していくことがすでに宣言されています。
詳しくは前回ブログ「国土交通省が公表! マンション管理の基本方針」をご覧ください。

「高経年マンションの増加」も「人口減少と高齢化」も、将来的にさらに進むことが明白です。
しかし分譲マンションの管理は様々な要因による難しさがあり、将来のための準備を先送りにしがちです。
管理が適正に行われていないマンションは「管理不全マンション」と呼ばれますが、管理不全に陥らないように地方公共団体が管理組合に対して助言・指導・勧告を行うことができるように法制度が整備されています。
その具体的な指針がこの助言等ガイドラインなのです。

2.管理不全マンションの何が問題なのか?

マンション管理は私有財産の管理であり、管理の主役は管理組合(区分所有者の団体)です。
原則的に他人が口出しすることはできません。
しかし、分譲マンションの管理は特有の難しさがあり、管理がうまく行われなければ周囲の住環境等に悪影響を及ぼしてしまいます。
単に美観・景観が悪くなるだけでなく、外壁タイルがボロボロと落ちたり外付けの階段や廊下が崩れてきたり粗大ごみが不法投棄されて放火の原因にもなります

管理不全マンションは街づくりの阻害原因であるため、管理不全の兆し(高い可能性)があれば行政があらかじめ改善を支援することが重要です。
しかし県庁や市役所が勝手にそれを行うことはできないため、法的根拠となる法律や条例が整備されているのです。
公共の福祉のために、地方公共団体が法令に基づき、私有財産の管理を手助け(助言・指導・勧告)しています。

3.助言等の具体的な内容

管理不全に陥るマンションには共通する特徴があります。
下記のように「やるべき基本的な内容」が行われていないと管理不全になりやすいです。

・理事長等が定められていない
・年一回以上総会が開催されていない
・管理規約が無い、あっても見直しがされていない
・管理費会計とは別に、修繕積立金会計がない
・修繕積立金が積み立てられていない

そんなマンション、存在するの?と疑問に思うかもしれませんが、実はあるんですよ!
一つの建物に別々の世帯が住んでいるのに、建物全体の管理が統一的に行われていないのです。
いわば「建物全体の管理にまとまりが無い」状態であり、老朽化したとしても解体する人は誰もいません。
手が付けられない状態になる前に、やるべき基本的なことをやるように地方公共団体が助言・指導・勧告していきます。

4.助言等のPDCAサイクル

今回策定された助言等ガイドラインの目次をみると助言等のPDCAサイクルが見て取れます。
PDCAとはPlan(準備)→Do(実施)→Check(確認)→Action(措置)の頭文字であり、そのサイクルを何度も回していくことによって成果を上げていく仕組みです。

Plan(準備)では、(1)都道府県等としての方針を明確化し、(2)各マンションの管理状況を把握するための台帳を整備し、(3)助言等の判断基準のチェックシートを作成しておくことが望ましいとされています。
すでに東京都、横浜市、名古屋市、大阪府、神戸市等ではマンション管理組合の登録制度がありますが、さらにこの登録制度が充実していくでしょう。

また、Do(実施)→Check(確認)→Action(措置)として、いちど助言等を行い時間をおいて実施状況を確認し、もし実施されていなければさらなる働きかけを行っていきます。
地方公共団体だけでは人材(公務員)が限られていますので、国家資格者であるマンション管理士が行政支援を行っていきます。
このPDCAサイクルは時間・労力・財源を多く要すると思いますが、街づくりには必要なものであると考えられています。

5.さいごに

マンションは街の一部であるとともに自分たちの生活の基盤です。
国・地方公共団体はマンション管理の応援者ですが、あくまで主役は管理組合です。

今日・明日の生活とともに、10年後・20年後の生活も同じく大切です。
たとえ10年後に自分が亡くなったとしても、マンションは親族や次の買い手の大切な生活基盤となります。
長期的視点に立ち、マンション全体の管理早い時期から考えて進めましょう。
地方公共団体による助言・指導・勧告はあくまで「最終段階の方法」でしかありません。

最後までお読みいただき、いつもありがとうございます m(__)m
2021.12.16記

ブログ記事一覧に戻る
今週のよく読まれた記事
MENU CLOSE
PAGE TOP