こんにちは、マンション管理士・税理士の深谷高史(ふかやたかし)です。
マンション管理組合では理事が業務を執行するだけではなく、監事が監査します。
監事の職務は理事の職務と同じくらい重要です。
今回のブログでは、監事の職務である業務監査と会計監査について解説します。
【もくじ】
・理事と監事それぞれの職務
・業務監査と会計監査
・総会議案書には監査報告書を付ける
・監査支援と外部監査
・さいごに
理事と監事それぞれの職務
マンション管理組合は、建物・敷地・附属施設の管理を行うための団体であり、区分所有者全員によって構成されます。
管理組合には、下記のような機関と役職があります。
【機関】
総会 =最高意思決定機関
理事会 =業務執行機関【役職】
理事 =業務を担当する役員
理事長 =業務を統括する役員
監事 =業務執行・財産状況を監査する役員
理事と監事は総会で選出されます。
必ず別々の人であり、同一人物が理事と監事を兼ねることはできません。
業務を行う人と業務をチェックする人が同じ人であれば、適切なチェックができない可能性が高いからです。
また、監事は監視役であるため、実際に修繕工事の発注、管理費等の出納などは行いません。
そのため簡単なイメージがあるかもしれませんが、不適切に行われた業務を見逃した場合には責任を問われる可能性があります。
監事は、管理規約や総会決議にもとづいて理事が適切に業務を執行しているか、業務の執行が法令に違反していないかを確認したり、理事会に出席して意見を述べたりします。
監事は、事後的な不適切性の指摘も、予防的な不適切性の指摘も行わなければなりません。
監事の責任の重さにびっくりしなくてもいいのですが、軽く考えるのはやめたほうがいいでしょう。
万が一のトラブルで起こりうる損害賠償や弁護士費用が不安な場合には、管理組合役員の賠償責任保険がありますのでご検討ください。
業務監査と会計監査
管理規約の見本である国土交通省の標準管理規約(単棟型、最新は2021年6月22日改正)では、監事の職務について次のように定めています(第41条)。
監事は、管理組合の業務の執行及び財産の状況を監査し、その結果を総会に報告しなければならない。
この一文は次の2つの内容を意味しています。
・監事の監査は、「業務監査」と「会計監査」の2種類がある
・監事は「監査報告書」を作成し、総会議案書に付けられます
理事は、総会決議された事業計画書にもとづいて事業を執行します。
監事は、その業務の執行をチェックします。
これが業務監査です。
理事は、総会決議された収支予算書にもとづいて会計を執行します。
監事は、その会計の執行をチェックします。
これが会計監査です。
具体的には、議事録・管理委託契約書・工事契約書・工事完了報告書・点検報告書など多くの書類に目を通したり、修繕箇所の現地確認を行ったり、金融機関の残高証明書との照合や現金残高を確認し、会計書類の保存状況を指導したりします。
総会議案書には監査報告書を付ける
業務監査と会計監査の結果をまとめた書類が「監査報告書」です。
会計年度が終わった後に開催される通常総会では、理事長から「事業報告書」と「収支決算書」が総会決議案として上程されます。
それらに添えられるかたちで、監事から「監査報告書」が提出されます。
「業務をやりました」「業務をチェックしました」という両方の書類がセットになっていないと、総会の場で区分所有者全員で審議して決議することができません。
「事業報告書」「収支決算書」だけでは…お話にならないというわけです。
監査報告書は、大きく分けて「監査の方法の概要」と「監査意見」が記載されます。
問題がなければ、業務の執行・財産の状況は適正である旨の意見となります。
問題があっても総会開催前に是正できれば、監査報告書には適正意見が記されます。
監査支援と外部監査
監事の仕事は監査意見書に名前を書いてハンコを押すだけ…というケースが多いようですが、私はなんにも確認せずにサインしてハンコ押すなんて怖くてできません。
自分の信用と責任に関わることですからね。
かといって、専門家でもないのに輪番制で監事になった人はどうすればいいのでしょうか…?
外部専門家に手伝ってもらう(監査支援)か、外部専門家にお任せする(外部監査)という2つの方法があります。
例えば、弁護士、公認会計士、税理士、マンション管理士などの外部専門家を活用するのです。
監査支援の場合、管理組合の監事と外部専門家が一緒に監査業務を行います。
外部監査の場合、管理組合から外部専門家へ書類を渡して外部専門家だけで監査業務を行います。
自分だけの財産管理なら監査なんて不要ですが、マンション管理は共有財産の管理ですから監査が必要です。
外部専門家へ依頼すれば費用はかかりますが、外部の知識や労力を利用することができます。
限りある資金・労力・時間を有効に活用するためには、外部専門家の活用は一つの選択肢です。
さいごに
監事の監査には業務監査と会計監査があり、その結果は監査報告書のかたちで総会へ提出されます。
監事は、理事の業務執行と財産状況をチェックする役職であり、とても高度な責任を伴います。
修繕積立金の残高は数千万~数億円であり、個人資産より遥かに多額な預金が管理組合の財産として積み立てられます。
自分たちだけでやりきれない場合には、監査支援か外部監査を外部専門家に依頼することをおすすめします。
大企業の粉飾決算が社会問題になるように、監査によって不正をすべて抑制・発見できるとは限りません。
しかし、意見を言ってくれれば不適切な業務を未然に防ぐことができます。
チェックの目があれば不正を行う動機が無くなる効果もあります。
適切な監査を行っていれば、たとえ不正が発覚したとしても監事は責任を追及されません。
マンション管理は、自分達の財産管理です。
費用はかかりますが、必要であれば外部専門家の助けを借りましょう。
当事務所では、マンション管理組合の監査支援を行っております。
(外部監査は行っておりません)
また、会計代行を専門家へ依頼するのも、誤りや不正の防止効果があります。
会計帳簿の作成代行を通じて外部者に資金の出納や書類を見てもらうことによって、監査と同様の効果が期待できるからです。
当事務所はマンション管理組合に特化した税理士事務所です。
毎月の記帳、毎期の決算書、予算書の作成支援も行っておりますので、お気軽にお問い合わせフォームよりご連絡ください。
最後までお読みいただき、いつもありがとうございます m(__)m
2022.04.10記