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税務
会計業務の難しさ

こんにちは、マンション管理士・税理士の深谷高史(ふかやたかし)です。

以前のブログでも解説しましたが、マンション管理組合の会計の特徴として「予算準拠」「区分経理」があります。
しかし、一般的な会計の特徴である「複式記入」「発生主義」も管理組合の会計を複雑で難しくしています。

今回のブログでは、マンション管理組合の会計における「複式記入」「発生主義」について解説します。
簿記・会計を勉強したことがない方にはかなり難しい内容です。
チンプンカンプンでもあなたのせいじゃないです!(笑)

【もくじ】
・単式記入と複式記入
・現金主義と発生主義
・マンション管理計画認定制度の認定基準では?
・さいごに

 

複式記入と単式記入

マンション管理会社へ会計業務を委託している場合、ふつうは複式記入(複式簿記)により会計帳簿が作成されます。
税理士事務所などへ帳簿の作成を委託していたり、自主管理でもしっかり事務を行っている管理組合も複式記入を採用しています。
資産・負債・純資産の増加・減少を記録しているため、収支決算書とともに貸借対照表も作成されます。

他方、マンション管理会社へ会計業務を委託していない場合(自主管理の場合)、ごくごく簡単に収支決算書を作成している管理組合があります。
現金・預金の収入・支出のみを記録するため、収支決算書のみが作成されます。
資産・負債・純資産の増加・減少を記録しないため、貸借対照表は作成されません
町内会やPTAなどの決算書で多く見られるものと同様です。

管理組合の財政状態を示す貸借対照表を帳簿に基づいて作成するためには、複式記入を採用する必要があります。
収支決算書と貸借対照表の両方につながりを持たせて作成するためには、2つの会計書類ともに帳簿に基づいていなければなりません。

単式記入の場合には帳簿に基づいて貸借対照表を作成することはできません
資産・負債を帳簿以外の記録に基づいて集計し、財産目録を作成する以外の方法はありません。
決算日の時点において管理費や修繕積立金が未収(滞納)となっていたり、修繕費などの支出が未払になっている場合は管理費等の集金台帳や経費の請求書を確認し、銀行預金の残高証明書とともに集計して財産目録を作成します。
単式記入の場合は貸借対照表を帳簿に基づいて作成できないという点はデメリットです。

発生主義と現金主義

マンション管理会社へ会計業務を委託している場合、ふつうは発生主義により会計帳簿が作成されます。
税理士事務所などへ帳簿の作成を委託していたり、自主管理でもしっかり事務を行っている管理組合も発生主義を採用しています。

例えば、管理費や修繕積立金は区分所有者から収入すべき時点で計上します。
5月分の管理費等は5月中に計上します。
仮に集金が遅れて7月中に入金しても、5月分の収入として計上するのです。
同様に、5月中に修繕工事が行われ7月中に出金しても、5月分の支出として計上します。
そのズレの分は未収管理費等、未払費用として貸借対照表に計上されますので、発生主義と複式簿記は密接に関連しています。

他方、マンション管理会社へ会計業務を委託していない場合(自主管理の場合)、ごくごく簡単に現金主義により会計帳簿が作成されます。
現金・預金の実際の入金・出金のみを記録するため、決算日での未収管理費等や未払修繕費等があってもその額は収支決算書に計上されません
例えば修繕工事を行い決算日をまたいで工事代金を支払った場合、予算額と決算額にズレが生じてしまいます。

会計年度内の組合事業の実績を収支決算書に適切に反映させるためには、発生主義で収支を計上する必要があります。
現金主義の場合は収支決算書が組合事業の実績を適切に表現できないという点はデメリットです。
なお現金主義であっても複式記入を行っていれば貸借対照表を作成することは一応できます。

マンション管理計画認定制度の認定基準では?

2022年4月1日以降、各地の地方公共団体においてマンション管理計画認定制度がスタートしています。
この制度は、地方公共団体がマンション管理組合の管理計画について適切かどうかを認定する制度です。
認定基準は全部で16項目ありますが、「管理組合の経理」については下記の3項目が定められています。

【「管理組合の経理」に関する認定基準】
・管理費及び修繕積立金等について明確に区分して経理が行われている
・修繕積立金会計から他の会計への充当がされていない
・直前の事業年度の終了の日時点における修繕積立金の3ヶ月以上の滞納額が全体の1割以内である

国土交通省より管理計画認定に関する事務ガイドラインが出ており(2021年11月)、確認書類として「貸借対照表及び収支計算書」が挙げられています。
認定基準3つともに満たしていることが確認できれば良いため、必ずしも貸借対照表を作成することまでは求められていないと私は推測しています。

ただし銀行預金などの組合資金の残高が、管理費と修繕積立金とで区別されていることは重要です。
各年度において収支が区分経理されていても、残高がひとまとめに合算されていては修繕資金の適切な積立という目的を達成しづらいからです。
また管理費等の滞納額の把握も行われていなければなりません。
したがって「複式記入」「発生主義」で会計帳簿を作成する方が望ましいと考えます。

■さいごに

マンション管理組合の会計は、区分所有者全員の財産管理を長期的に行うためのものです。
そのため「予算準拠」「区分経理」という特徴を採用します。
また一般的な企業会計の特徴でもある「複式記入」「発生主義」を採用することをお勧めします。

マンションの区分所有者の中には経理職の方や、簿記の資格を保有している人もいます。
経理知識のある区分所有者に会計担当理事になってもらうと大変ありがたいです。
しかし、輪番制の場合にはずーっとやってもらうわけにはいかないですし、またマンション管理組合独特の会計を難しく感じるかもしれません。

会計帳簿と決算書の作成代行、予算書の作成支援を外部の専門家に依頼するというのも一つの方法です。
当事務所では、「管理組合様向け 会計代行サービス」を行っていますのでぜひご検討ください。

日常的な会計帳簿の作成について継続的に当事務所が関与することにより、帳簿作成の代行以上の効果が期待できます。
例えば管理規約・長期修繕計画の見直し、マンション管理計画認定制度の活用、書類・資料の整理方法、総会資料の作成などのためのアドバイスもスムーズに行うことができます。

お困りごとがございましたらぜひ「お問い合わせフォーム」よりご連絡ください。

最後までお読みいただき、いつもありがとうございます m(__)m
2022.05.04記

この記事を書いた人

陽だまりマンション税務事務所/代表・深谷高史(ふかやたかし)
一般社団法人愛知県マンション管理士会 理事
東海税理士会刈谷支部 所属

マンション管理士、税理士、マンション管理組合理事長の3つの顔を持っています。分譲マンション管理組合の税務申告を得意としています(携帯電話基地局など)。このサイトでは、マンション管理、税務、FPなどについてできるだけわかりやすくお伝えしています。

 

 

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